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システム概要

 社会の隅々にまでコンピュータネットワークが浸透し,わが国におけるインターネットの 人口普及率は平成20年度末には75.3%と推計されている.これにともない,ネットワーク技術に精通した技術者の需要が高まっている. しかし,国内におけるネットワーク技術者は不足しており,高い専門知識とスキルを持ったネットワーク技術者の早期の育成が必要とされている.

 大学をはじめとする多くの教育機関では,ネットワーク技術者の養成を目的とした教育として, 書籍や資料による講義とルータなどのネットワーク機器を用いた演習が行われている. 講義では,通信プロトコルの仕様などネットワークに関係する知識について学習する. 一方,実機を用いた演習では,技能の習得と講義で得た知識の確認が可能となる.

 実機を用いたネットワークの構築演習としては,CCNA(Cisco Certified Network Associate) の取得を目的とするシスコネットワーキングアカデミー(以下,CNA)が世界中の教育機関で実施されている. CNAは,ルータやスイッチの設定作業を繰り返し演習することで,ルータなどの設定に関する技能を習得することを目的としている. しかし,CNAに代表される実機を用いたネットワークの構築演習では,必ず複数台のネットワーク機器が必要となる. このため,学習者がいつでも手軽に演習に取り組める環境を整備することは容易ではない.

 そこで本研究では,User Mode Linux(以下,UML)を活用することで, 仮想的なルータと仮想的なホストなどを用いるネットワーク構築演習支援システム(以下,本システム)を開発した. UMLは仮想Linux環境ソフトウェアとして広く知られている. 本システムは,1台のPC上に仮想的なネットワークの構築が可能なため,実機による演習を補助し, 実機を用意できない環境でもルータなどの設定演習を可能とする.実機を用いた演習と比べて, いつでも手軽にネットワークの構築演習が実施できる. 本システムは,仮想的なルータと仮想的なホストの操作・設定作業によって, ネットワークの構築演習を可能とする.本研究では,主にルータへのルーティングの設定演習を扱い, 複数の方式のルーティングプロトコルの設定演習を可能とする.

 本システムは,1台のPC上に仮想的なネットワークの構築を可能とすることで, 実機による演習を補助し,実機を用意できない環境でもルータなどの設定演習が実施できることを目的とする.