MR環境を用いたネットワーク演習システム

システム概要

 経済産業省の試算によると,IT人材は2030年までに約59万人が不足するとされている. 一方,大学等の情報系の学部・学科を卒業する学生の数は限られている. このため,企業は情報系の学生に限らず採用を行い,採用後,社内教育により,ネットワークエンジニアなどのIT人材を育成している. ネットワークエンジニアの育成における学習では,書籍などにより知識を習得し,実機を用いた演習により実践的な技術を習得する. 実践的な技術の習得には,設定変更作業など,実際の業務(以下,実務)に近い演習を実務環境を用いて実施することが有効である. しかし,稼働しているネットワークを用いて演習を行う場合,わずかな設定変更が利用者に大きな影響を与える可能性がある. そのため,ネットワークエンジニアの育成の際,データセンターやサーバ室などの実務環境を使用することは困難である.

 そこで,本研究では,ネットワーク構築演習において実機のネットワーク機器を用いることなく演習環境を提供することを目的に, MR環境を用いたネットワーク演習システムを開発した.

 本システムではMRを実現するためにMicrosoft HoloLens(以下,HoloLens)を採用した. そして,ネットワーク機器と結線に用いるLANケーブル,ネットワーク機器を収納するラックをホログラムとして表示した. また,表示したネットワーク機器の設定を可能とすることで設定演習を実現した. さらに,模擬的に構築した演習環境の保存と,自動構築を可能とした. 以上により,実務環境を用いることなく実務環境に近い環境で演習を実施することが可能となる.